2025/07/03 18:00

昼は麺、夜は弁当。ボリュームは十分で、空腹もきちんと消える。それでも一日の食事を栄養の中身で見ると、「多いもの」と「足りないもの」が同じ食卓に並ぶことがあります。現代の課題は、単純な食べすぎではありません。満腹と、必要な栄養が満たされることは別の話です。
9.6gと258.7gが並ぶ食卓
厚生労働省の令和6年(2024年)「国民健康・栄養調査」によると、20歳以上の食塩摂取量は1日平均9.6gでした。一方、野菜摂取量は平均258.7gです。「健康日本21(第三次)」が掲げる目標は、食塩が平均7g、野菜が平均350g。国全体で見ると、塩分は多く、野菜は少ない状態です。
二つの平均を単純に引けば、食塩は2.6g多く、野菜は91.3g少ない計算になります。ただし、これは国民全体の平均値同士の比較です。平均は一人ひとりの成績表ではなく、日本の食卓を遠くから写した集合写真のようなもの。「自分も毎日その差だけ多い、あるいは少ない」とは限りません。
7g、7.5g、6.5g、5g どれが正しい?
食塩の目安を調べると、いくつもの数字が出てきます。7gは、「健康日本21(第三次)」で国民の平均摂取量をどこまで下げるかという政策目標です。「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、生活習慣病の予防を目的とする成人の目標量を、男性7.5g未満、女性6.5g未満としています。世界保健機関(WHO)の勧告は、成人で5g未満です。
数字が食い違っているのではなく、対象や使う目的が違うのです。日本の食事摂取基準は、WHOの5gと日本人の現在の摂取量との隔たりも踏まえ、実行可能性を考慮して設定されています。
現在の平均9.6gが、いずれの数字よりも高いことは共通しています。食塩の摂りすぎは血圧を上げ、心臓や血管の病気の危険を高めるため、少しずつ減らす意味があります。治療中の人は、医師や管理栄養士から別の目標を示されることもあります。
数字は、悪化だけを語っていない
食塩9.6gは目標を上回る一方、この12年間では最も低い値でした。また、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事が1日2回以上ある日が「ほぼ毎日」の人は52.8%で、政策目標の50%を上回っています。ただし、男女とも20歳代ではこの割合が最も低く、野菜摂取量も若い年代ほど少ない傾向が見られます。
食生活が一方向に悪くなっている、とは言い切れません。この12年で最も低かった数字、目標を上回った数字、なお届いていない数字が同居している。それが今の実像に近そうです。
便利な食品を悪者にしない
弁当や総菜、冷凍食品を「便利だから栄養が悪い」とひとくくりにすることはできません。食塩相当量も野菜の量も、商品ごとに異なります。カット野菜や冷凍野菜も、忙しい日の立派な助っ人です。
容器包装に入った一般用の加工食品には、原則として栄養成分表示があります。同じ種類の商品で迷ったら「食塩相当量」を比べる。ただし、「1包装当たり」と「100g当たり」が混在することがあるので、表示の単位も一緒に見ます。
野菜の足し算と、塩分の引き算
野菜料理1皿に使われる野菜は、およそ70gが目安です。平均258.7gと目標350gの差は、小鉢1皿強。いつもの食事に、おひたしや温野菜、具だくさんの副菜を一つ足すと、目標へ近づきやすくなります。野菜を食べれば塩分が帳消しになるわけではありません。漬物や濃い味の煮物、汁物なら、野菜と一緒に食塩も増えることがあります。
野菜は足す、塩分は別に引く。麺類の汁を飲み干さない、調味料を最初から全部かけない、似た商品なら食塩相当量の少ない方を選ぶ。二つを別々に考えるのがコツです。
一食の満点より、日々の修正
毎食を完璧に整えようとすると、食事は急に面倒になります。昼が丼だけなら、次の食事で野菜の副菜を足す。食塩の多い料理を選んだら、別の料理は薄味にする。主食・主菜・副菜も、一皿ずつ並べる必要はなく、具だくさんの料理で組み合わせることができます。食卓を変える第一歩は、我慢の量を増やすことではありません。

