2025/10/09 21:00

はじめに
うつ症状のケアといえば薬やカウンセリングが定番。
食事そのものを丁寧に整えると、症状の改善にどの程度寄与するのでしょうか?
この疑問に挑んだのが、2017年のSMILES試験(大うつ病の成人に対する食事改善のランダム化比較試験)です。
研究デザイン
中等度~重度のうつ病で、かつ食事の質が低いと判定された67名。
12週間、食事改善プログラムか社会的支援のいずれかに割付け、開始前と12週後の症状を比較しました。
介入群:栄養士による7回の個別食事指導
対照群:同頻度の社会的支援(面談)
主要評価はMADRS(うつ症状の重さ)。
寛解の割合も確認しています。
結果
介入群では、症状改善+寛解率アップ。
食事群は対照群よりMADRSの改善が大。
寛解率(MADRS<10):食事群32.3% vs 対照8.0%。
NNT=約4.1(4人取り組むと1人が追加で寛解)。
これらは12週間という比較的短期間で得られた変化です。
どんな“食事”に変えたのか?
いわゆる地中海食をベースにした「ModiMedDiet」を採用。
増やす:全粒穀物、野菜、果物、豆類、低脂肪の無糖乳製品、ナッツ、魚、赤身の肉、鶏肉、卵、オリーブオイル。
減らす:菓子、揚げ物、精製穀物、ファストフード、加工肉、清涼飲料などの「余分な」食品。
量の制限ではなく“質の底上げ”が目的。
体重減少を狙うものではありません。
実は“お財布”にも優しい?
食費が安くなる可能性も示されました。
参加者20名の食費を試算したところ、ベースラインでは週138豪ドルに対し、推奨食は112豪ドルでした。
まとめ
SMILES試験は、栄養士による食事改善サポートが、うつ症状の有意な改善と寛解率の上昇につながる可能性を示しました。
食事にひと手間加える価値がありそうですね。
参考文献
Jacka FNら(2017)「A randomised controlled trial of dietary improvement for adults with major depression (the ‘SMILES’ trial)」(BMC Medicine, 15, 23)
https://bmcmedicine.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12916-017-0791-y