2026/05/28 21:00

はじめに
「お酒は飲みすぎが悪いだけで、少しならむしろ体にいい」
この考え方は、長いあいだかなり広く信じられてきました。
ですが近年、この見方はかなり揺らいでいます。
なぜ「少量は体にいい」と言われたのか
この説が広まった大きな理由は、昔の観察研究で、少量飲酒者にJ字カーブと呼ばれる結果がよく見えたからです。
まったく飲まない人より、少し飲む人のほうが死亡率や心血管疾患リスクが低く見え、そこから先は飲むほど悪くなる、という形です。
Lancet 2019 の論文でも、従来の観察研究では「適量飲酒は心血管リスクが低い」と広く関連づけられてきた、と説明されています。
問題は、比べ方にあった
ところが、この話には大きな落とし穴がありました。
飲まない人の中には、もともと一滴も飲まない人だけでなく、体調や病気をきっかけに酒をやめた人が混ざりやすいのです。
さらに、少量飲酒者は運動習慣、食事、収入、受診行動、喫煙の少なさなど、アルコール以外の面でも健康寄りであることが多く、単純な比較では、健康なのは少量飲酒の効果に見えてしまいます。
JAMA Network Open 2023 は、107のコホート研究、約483万人を対象にした研究です。
研究の質やバイアスを厳しく調整すると、1日25g未満の飲酒では全死亡リスクの有意な低下は確認されませんでした。
要するに、「少し飲む人は長生き」という物語は、かなり怪しいということです。
いま何が言えるのか
いまの知見でかなり言いやすいのは、「少量なら健康にいい」とは、言いにくいということです。
WHO Europe 2023では、「健康に安全な飲酒量はない」と明言し、発がんリスクは最初の一滴から始まると報告しました。
また、少量・中等量飲酒の効果が、がんリスクを上回ると示した研究は見当たらない、ともしています。
まとめ
「健康のために一杯」は、言わないほうがよさそうです。

