2026/07/23 21:00


「お酒を飲むと、自分は別人になる」そう感じたことはないでしょうか。

普段よりよく話す。笑いが止まらない。大胆なことを言う。急に感情的になる。翌日になって、「昨日の自分はどうかしていた」と反省する。酔うと人格全体が変わるのでしょうか。それとも、本人がそう感じているだけなのでしょうか。この疑問を、実際にお酒を飲んでもらって調べた実験があります。


156人が、実験室でお酒を飲んだ


2017年、米国の研究チームは「酔った性格」を本人と第三者の両方から調べる実験を行いました。参加したのは156人。参加者は同性の友人グループで実験室を訪れ、約半数がお酒を飲み、残りはアルコールを飲まない条件に分けられました。その後、性格の違いが表れやすいように設計された、さまざまな活動に取り組みました。

その様子は録画され、訓練を受けた複数の観察者が、参加者の振る舞いを評価しました。本人にも、普段の自分と酔った自分の性格について回答してもらいました。この研究では、「本人が感じた変化」と「周囲から見えた変化」を比べたのです。


本人は「かなり変わった」と感じた


実験の結果、酔った参加者本人は、しらふの自分と比べて、性格が幅広く変化したと感じていました。「いつもより社交的になった」だけではありません。本人の自己評価では、性格のさまざまな面で、しらふの自分と酔った自分に違いがあると捉えられていました。お酒を飲んだ本人にとっては、気分も考え方も行動も変わり、まるで普段とは違う自分になったように感じられたのでしょう。

ところが、周囲の評価は少し違いました。録画を見た観察者は、本人が感じていたほど幅広い性格変化を確認しませんでした。

本人と観察者の両方で、比較的一貫して確認されたのは、主に、外向性の上昇でした。外向性とは、社交的で、活動的で、話好きといった性格の側面です。酔った参加者は、周囲から見ると、普段よりよく話し、活発で、人との交流に積極的になったように見えていました。


心の中はどうなっている?


なぜ、本人と周囲で評価が違ったのでしょうか。一つの可能性は、本人には気分や思考の変化まで感じられますが、周囲の人が観察できるのは、声の大きさ、発言の回数、笑顔、動きなど、外に表れた行動だけだからです。

本人の中では、「緊張が消えた」「急に大胆になった」「感情が大きく動いた」と感じていても、周囲から見ると、単によく話すようになっただけかもしれません。酔った本人にとっては大変身。しかし、周囲から見ると、変化は案外限られている。お酒は人格をまるごと入れ替えるというより、社交性や活発さなど、外から見えやすい行動を強く表すのかもしれません。


「お酒のせいで別人になった」は本当?


この研究から、「お酒を飲んでも性格は変わらない」とまでは言えません。少なくとも外向性には、比較的一貫した変化が確認されています。ただし、「酔うと人格全体が別人になる」というイメージには、本人の主観がかなり含まれている可能性があります。酔って大胆な発言をしたからといって、それが隠されていた本当の性格とは限りません。酔ったときに別人になったように感じても、周囲からは「今日はずいぶんよくしゃべるな」くらいに見えていることもありそうです。


まとめ


この研究は156人を対象に、実験室で友人グループと活動してもらった一つの研究です。実際の宴会や強い泥酔状態、家庭での飲酒でも同じ結果になるとは限りません。ただし、「酔うと自分は別人になる」と思っているのは、もしかすると本人だけ。周囲が見ているのは、別人格ではなく、いつもより少しにぎやかになったあなたなのかもしれません。


参考文献


Winograd, R. P., Steinley, D., Lane, S. P., & Sher, K. J.(2017). An experimental investigation of drunk personality using self and observer reports. Clinical Psychological Science, 5(3), 439–456. doi:10.1177/2167702616689780