2026/08/27 21:00

資本から得られる収益率は、経済の成長率を上回りやすい。前回は、トマ・ピケティ氏の「r>g」を、NISA(少額投資非課税制度)から考えました。ところで、この式はいつでも成り立つのでしょうか。どの国でも、どの時代でもrはgを上回るのでしょうか。
r>gは長期の平均ではかなり強く確認されています。ただし、毎年、すべての国で必ず成り立つ法則ではありません。
数式だが、自然法則ではない
rは「資本収益率」で、利益、配当、利子、家賃など、資産から得られる収益の割合です。gは「経済成長率」で、経済全体の所得や生産が増える割合を指します。ピケティ氏は、長い歴史の中ではrがgを上回る時期が多かったと指摘しました。
一方で、本人もr>gを、特定の時期や政治的状況では成り立つものの、別の状況では成り立たない「条件付きの歴史的な命題」と説明しています。
長期では、かなり強く確認されている
ピケティ氏とは別の研究チームが、16の先進国について1870年から2015年までのデータを調べています。住宅、株式、債券などを合わせた実質収益率と、物価変動を除いた実質国内総生産(GDP)の成長率を比較したところ、世界大戦期にあたる二つの年代を除き、長期的にはrがgを上回っていました。
測定方法はピケティ氏と完全に同じではなく、対象も先進国に限られます。それでも、r>gが単なる思いつきではなく、長期データに裏付けられた現象であることは確かです。
税引き後では、逆転した時期も
ピケティ氏の推計では、税引き前の資本収益率は、世界全体で見ると長期にわたり経済成長率を上回ってきました。ところが、税金と資産の損失を差し引いた収益率で見ると、20世紀にはrがgを下回った時期があります。二度の世界大戦による資産の破壊や、インフレ、課税・規制の強化によって、資産保有者が実際に受け取る収益率が下がった一方、戦後の人口増加と経済成長でgが高まったためです。
ここから分かるのは、「どのrを使うか」で答えが変わることです。税引き前なのか、税引き後なのか。資産価格の下落まで含めるのか。同じrという文字でも、中身は一つではありません。
国が変われば、条件も変わる
経済成長率は、国の発展段階によって異なります。産業化や他国への追いつきの途中にある国ではgが高くなりやすく、成熟した国では低くなりやすい傾向があります。ただし、gが高い国で必ずr<gになるわけではありません。gが変わるときには、rも動くからです。
国や時代を比較するには、税引き前と税引き後、物価変動を含む数字と含まない数字など、条件をそろえる必要があります。ある国でr>gが成り立っているからといって、同じ年に他の国でも成り立つとは限りません。
個人の運用成績を約束するものではない
もう一つ注意したいのは、ピケティ氏のrが、株式や投資信託の年間利回りを保証する数字ではないことです。rは、経済全体に存在するさまざまな資産から得られる収益を広く捉えたものです。実際の投資結果は、保有する商品、購入した時期、手数料、税金によって変わります。1年間だけ見れば、個人の運用成績がマイナスになることも十分にあり得ます。
r>gは、警告灯
経済成長が低く、税引き後の資本収益率が高い状態が長く続けば、すでに多くの資産を持つ人の優位は残りやすくなります。r>gは未来の予言ではなく、資産格差が固定されやすい状況を知らせる式と考える方がよいでしょう。

