2026/09/03 21:00


r>g。資産から得られる平均的な収益率が、経済全体の成長率を上回る。前回は、この式が「投資する人の利益」と「働く人の賃金」を直接比べたものではないことを見ました。


r>gは、格差の増幅器


ピケティ氏は、ほかの条件を同じとすれば、rとgの差が大きいほど、長期的な資産格差を増幅しやすいと述べています。ここで重要なのは、「生み出す」ではなく「増幅する」という点です。格差の出発点になるのは、すでにある資産の偏りだけではありません。事業の成功や失敗、運用成績、貯蓄する割合、相続なども関係します。


資産の偏り


極端な例を考えてみます。10人全員が同じ額の資産を持ち、同じ収益率で運用し、収益から同じ割合を残したとします。賃金など、ほかの条件も同じなら、rがgを上回っていても、10人が持つ資産の割合は変わりません。

反対に、1人が資産の大半を持ち、その収益を繰り返し運用できるなら、優位は続きやすくなります。rとgは社会全体の平均的な数字なので、資産がどれほど偏っているかまでは教えてくれません。同じr>gでも、どの程度資産が偏っているか、によって格差の動きは変わります。


収益は、そのまま資産になるわけではない


rは資産から得られる収益の割合です。ただし、その収益がすべて元本に戻るわけではありません。生活に使う分もあれば、税を支払ったあとに残す分もあります。反対に、働いて得た所得から貯蓄し、新しく資産を築く人もいます。資産がどれくらい増えるかは、収益率だけでなく、税引き後にいくら残して再び運用するか、新たにいくら貯蓄するかにも左右されます。

世代をまたぐと、もう一つ条件が加わります。資産が相続でまとまって引き継がれるのか、複数の相続人に分かれるのか。受け継いだ人が運用を続けるのか、使うのか。相続は資産を次世代へ移しますが、格差への影響は渡り方と、その後の行動によって変わります。


「格差」は一種類ではない


r>gが直接関係するのは、主に資産格差です。一方で、賃金の差には、技術の変化、働く人の交渉力、雇用制度など、別の要因も関わります。資産からの所得と働いて得る所得を合わせた「所得格差」も、r>gだけでは説明できません。

r>gなら格差は必ず広がるのでしょうか?答えは「r>gだけでは決まらない」です。しかし、気にしなくてよいという意味でもありません。資産が一部に偏り、その収益を再び運用し、次の世代へ渡せる状況では、r>gは最初の差を長く残す力になります。