2026/09/10 21:00

NISAの積立額を増やした。口座の残高は積み上がっている。それなのに、給料日前の預金口座は心細い。急な出費があると、すぐに不安になる。将来に回した資産は増えているのに、今使える現金が足りない。
そんな状態を「NISA貧乏」と呼ぶことがあります。問題になるのは、支払いに困ったり、借入れや不本意な売却が必要になったりするところまで、投資を優先している場合です。
年間360万円は「目標」ではない
2026年9月時点の成人向けNISAでは、つみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が年間240万円。併用すれば、年間最大360万円を投資できます。年間上限を単純に12で割れば月30万円ですが、毎月30万円を積み立てるよう求める制度ではありません。360万円は制度上の上限であって、利用者が毎年達成するよう求められている金額ではありません。
生涯を通じた非課税保有限度額は、購入額(簿価)を基準に1,800万円です。NISAは恒久化されており、非課税保有期間も無期限です。家計に合わせて、何年もかけて利用できます。
NISAの残高は、預金と同じではない
投資したお金が、その場で消えるわけではありません。現金が、株式や投資信託という別の資産に変わります。ただし、その価値は動きます。急に現金が必要になったとき、相場が下がっていれば、損失を確定させて売ることになるかもしれません。
NISAは、対象となる運用益に税金がかからなくなる制度で、元本を守る制度ではありません。売れることと、いつでも安心して使えることは別です。近いうちに必要になるお金まで投資すると、使う時期を自分で選びにくくなります。
積立額の多寡は、預金口座の減り方で見る
投資額が多すぎるかどうかは、NISAの残高だけを見ても分かりません。積み立てたあとの普通預金が、毎月どのように動いているかを見る必要があります。生活費を払うために毎月預金を取り崩している。予定している大きな支出の準備ができていない。家電の故障や医療費が発生したら、すぐにNISAを売ることになる。生活費の不足を埋めるために、カードローンやリボ払いを使いながら積立投資を続けている。
こうした状態なら、積立額が家計に合っていない可能性があります。積立額を減らしたり、一時的に止めたりすることは、資産形成の失敗ではありません。長く続けるための調整です。
お金を、使う時期で分けてみる
まず、毎月の生活費や税金など、今使うお金があります。次に、近い将来の予定や急な出費に備えて、預金で持っておきたいお金があります。その先に、当面使う予定がなく、値下がりしても時間をかけて待てるお金があります。
NISAでの投資に向いているのは、基本的に三つ目のお金です。必要な預金額に、全員共通の正解はありません。収入の安定性、家族構成、近く予定している支出によって変わります。大切なのは、「いくら投資できるか」を先に決めることではありません。「いくら手元に残しておく必要があるか」を考え、その残りから無理なく続けられる額を決めることです。
家計の余裕を考える
NISAは、利益への税負担を抑えながら資産形成を進められる制度です。しかし、非課税という利点が、投資商品の値下がりや家計の資金不足を消してくれるわけではありません。
「NISA貧乏」は、NISAそのものが人を貧しくするという話ではありませんが、将来に備えることを急ぐあまり、今必要なお金まで投資に回してしまう問題のことです。資産形成は、暮らしを支えるためにあります。見るべきなのは、非課税枠の残りではなく、積み立てたあとに残る家計の余裕です。

