2026/10/22 21:00

駅前の喫煙所の横を通りすぎるとき、思わず息を止めてしまう。そんな経験のある人は多いのではないでしょうか。
「副流煙」と「受動喫煙」
タバコを吸う人が口から吸い込む煙を「主流煙」、火のついた先から立ちのぼる煙を「副流煙」といいます。さらに、吸った人が吐き出す煙は「呼出煙(こしゅつえん)」と呼ばれます。
まわりにいる人が吸い込むのは、副流煙と呼出煙が混ざった煙です。これを自分の意思とは関係なく吸ってしまうことを「受動喫煙」といいます。「副流煙」という言葉はよく耳にしますが、実際にまわりの人が吸っているのは、副流煙だけではないわけです。
副流煙は、タバコの先がくすぶるように低い温度で燃えて出てくる煙です。燃え方が不完全なぶん、一酸化炭素やアンモニアなど、物質によっては主流煙より多く含まれるものがあります。
吸わない人に起こること
受動喫煙の害については、長い研究の積み重ねがあります。国立がん研究センターが日本人を対象とした研究をまとめて分析したところ、受動喫煙のある人は、ない人に比べて肺がんになるリスクが約1.3倍でした。アメリカ疾病対策センター(CDC:Centers for Disease Control and Prevention)も、受動喫煙によって、心臓病や脳卒中、肺がんのリスクがそれぞれ2~3割高まるとしています。
厚生労働省の検討会が2016年にまとめた報告書では、日本で受動喫煙が原因で亡くなる人は年間約1万5千人と推計されました。内訳は脳卒中が約8千人、心筋梗塞などの虚血性心疾患が約4,500人、肺がんが約2,500人です。世界保健機関(WHO:World Health Organization)は、世界で年間160万人以上の、タバコを吸わない人が受動喫煙で亡くなっているとしています。
CDCは「安全といえる受動喫煙の量はない」とし、短い時間でも体に影響が出ることがあると書いています。少しくらいなら平気、とは言いにくいのです。
子どもは自分で離れられない
受動喫煙の影響を受けやすいのが子どもです。先ほどの約1万5千人の中には、乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)による赤ちゃん73人も含まれています。CDCによると、受動喫煙はほかにも、子どものぜんそくの発作や中耳炎、肺炎や気管支炎のきっかけになります。
大人なら煙がいやだと思えばその場を離れられますが、小さな子どもはそうはいきません。とくに家の中や車の中では、逃げ場がありません。子どもにとって一番身近な受動喫煙の場所は、家庭なのです。
換気扇の下なら大丈夫?
家の中では、換気扇の下やベランダで吸っている、という人もいるでしょう。アメリカの公衆衛生総監が2006年にまとめた報告書は、吸う人と吸わない人の場所を分けたり、空気をきれいにしたり、換気をしたりしても、受動喫煙を完全には防げないと結論づけています。煙は目に見えなくなっても空気中に広がり、ドアのすき間や人の出入りとともに移っていくからです。
法律で変わったこと
日本では、2020年4月に改正健康増進法が全面施行されました。飲食店やオフィスなど、多くの人が利用する施設の屋内は原則として禁煙になり、吸えるのは決められた喫煙室の中だけです。加熱式タバコも、この法律の対象に含まれています。
国の調査では、2019年には飲食店で月に1回以上受動喫煙にあった人が約3割いましたが、全面施行後は大きく減りました。一方で、家の中はこの法律の対象外です。法律には、まわりの人に望まない受動喫煙をさせないよう配慮する、という努力義務もありますが、家庭での煙を減らせるかどうかは、結局そこで暮らす人しだいということになります。
タバコを吸うかどうかは、大人がそれぞれ決めることです。けれど、その煙を吸うかどうかは、隣にいる人には選べません。吸う人も吸わない人も、煙がどこまで届いているのかを少し想像してみる。それだけでも、まわりの空気は変わってくるはずです。

