2025/03/06 18:00



はじめに


本レポートは、Colmanら(2014)の論文「Caloric restriction reduces age-related and all-cause mortality in rhesus monkeys」(Nature Communications, 5:3557)を基に、研究の内容を翻訳・要約したものです。
本研究は、Colmanら(2009)の論文「Caloric restriction delays disease onset and mortality in rhesus monkeys」(Science, 325(5937), 201-204)の後続研究です。(こちらをご覧ください。)


研究の概要


本研究は、米国ウィスコンシン国立霊長類研究センターで実施され、76匹のアカゲザルを対象に行われました。
サルは以下の2グループに分けられました。

・対照群:通常の食事を摂取
・カロリー制限群:通常の摂取カロリーより30%減らした食事を摂取

研究開始時、サルは7~14歳であり、ヒトへの応用を考慮し、成体でのカロリー制限の影響を調査しました。


研究結果


研究の結果、カロリー制限を行ったサルは、通常の食事を摂ったサルよりも長生きすることが明らかになりました。

加齢関連の原因の死亡率が低下しました。
・対照群の63% (24匹/38匹) が加齢関連の原因で死亡
・カロリー制限群では26% (10匹/38匹) のみが加齢関連の原因で死亡
対照群の加齢関連の原因の死亡率はカロリー制限群の2.9倍

また、全死因死亡率(あらゆる原因による死亡率)も低下しました。
対照群の全死因死亡率は、カロリー制限群の1.8倍

2012年に行われた米国国立老化研究所(NIA)の研究では、カロリー制限の効果が確認されませんでした。
しかし、本研究の分析により、NIAの対照群がすでに適度なカロリー制限状態にあった可能性が示されました。
このため、NIAの研究では、対照群とカロリー制限群の違いが小さく、明確な差が出なかったと考えられます。


考察と今後の展望


本研究の結果は、「カロリー制限が霊長類の寿命を延ばす」ことを示す貴重な証拠となりました。
特に、ヒトに近いアカゲザルで寿命延長が確認されたことは、ヒトへの応用を考える上で重要です。


まとめ


・カロリー制限はアカゲザルの寿命を延ばし、加齢に伴う死亡のリスクを低下させる。
・全体的な死亡率も低下し、健康寿命の延長につながる可能性がある。
・ヒトにも応用できる可能性があり、さらなる研究が期待される。

これらの結果は、カロリー制限が「健康的な長寿」の鍵となる可能性を示す重要な発見です。
今後、ヒトを対象とした研究が進めば、「適度なカロリー制限が老化を遅らせる食生活の指針」として確立されるかもしれません。


参考文献


Colman, R. J., Beasley, T. M., Kemnitz, J. W., Johnson, S. C., Weindruch, R., & Anderson, R. M. (2014).
Caloric restriction reduces age-related and all-cause mortality in rhesus monkeys. Nature Communications, 5, 3557.